特定非営利活動法人

アジア眼科医療協力会

Association for Opthalmic cooperation in Asia

ネパール
眼科医療システム
強化プロジェクト

プロジェクトの概要

 ネパールにおける眼科医療システム強化プロジェクト(Strengthening Eye Care System in Nepal (SECSN( セクスン))は、2007 年1 月から2010 年1 月までの3 年間、ネパール全土を対象として、眼科医療システムを強化して、草の根レベルに眼科サービスが行き届くようにして、眼病患者や失明者を減少させる目的で行なわれました。 事業費は、日本国際協力機構(Japan International Cooperation Agency (JICA( ジャイカ)) からアジア眼科医療協力会(AOCA)へ委託された5 千万円です。つまりSECSN は、ODA として日本国民からの税金によるお金を使って行った日本政府とAOCA との連携事業です。このSECSN はネパール全土を対象とした眼科医療のシステムを強化するという大きなプロジェクトであり、JICA からの5 千万円だけでまかなえる事業でなく、AOCA もこの事業のために人件費の補強などの名目で約1 千万円の出費をしています。また、AOCA は手術顕微鏡4 台や超音波白内障手術装置4 台なども新品で揃えれば軽く1 億円を超える医療機械(まだ十分使える良い中古品を全国の病院、大学から寄付していただいた)を調達してネパールへ空輸するといった金銭以外のサポートも行い、少ない予算を補いました。さらに、手術指導教科書の作製や、手術トレーニング用モデル眼キットの開発も独自の資金で行いました。

プロジェクトの背景

 ネパールの人口は約2 千5 百万人で、両眼の完全失明者は18 万5 千人で失明率は1000 人に8 人と推定されています。その内白内障による失明が13 万人(70%)で、緑内障、トラコーマによる失明がそれぞれ2 万8千人、2 万5 千人です。白内障のほとんどは手術により視力を回復することが可能です。トラコーマは生活習慣を変えることで予防可能であり、早期発見治療により治療可能です。すなわちネパールにおける失明の約8 割は予防可能か治療可能なのです。

 このような失明、眼病の状況に対して、眼科疾患を治療する機関は眼科病院や大学の眼科医や眼科助手Ophthalmic Assistance (OA) やプライマリーアイケアセンターのOA などネパール全土で眼科医が約160 名、OA が約300 名おります。

 一方、ネパールの地域住民達が病気になった時かかる一番身近な医療機関は、村の保健所兼診療所というべきヘルスポストやサブヘルスポストです。ここには医師はいず、カトマンズで4 年間公衆衛生や初期医療を学んだ医療士が1 名いて、プライマリヘルスケアを行っています。このヘルスポストがネパール全土で約4000 あり、SECSN の対象地域にヘルスポストが826 件、ヘルスポスト医療士が826 名おります。

 SECSN は、病院やプライマリケアセンターで眼科医療を行っている眼科医やOA の技術力を高めると同時に、草の根でプライマリヘルスケアを行っているヘルスポストの医療士にプライマリアイケアを教育し、病院から草の根までの眼科医療を強化しようとするものです。

プロジェクトの三本の柱

 SECSN の3 つの柱について説明します。1つ目の柱は眼科医の研修プログラムで、超音波白内障手術(フェイコ手術)をマスターしてもらうものです。フェイコ手術は先進国ではごく一般的に行われる手術ですがネパールではちゃんと指導するものがいないため合併症の多い危険な手術ということになっていたのです。

2つ目の柱は、眼科助手(OA)の再教育プログラムで屈折矯正、手術室管理、医療機械管理、公衆衛生の4分野の再教育を行ってOA の技術力を高めるというものです。

3つ目の柱は、ヘルスポストの医療士への基礎的眼科ケアを教育するプログラムであり、彼らがネパールの村々において行っているプライマリヘルスケアの中にプライマリアイケアを組み込もうとするものです。

眼科医、OA、ヘルスポストの医療士がそれぞれに技術力をアップし、そして互いに連携することで、病院から草の根まで眼科医療が行き届き、眼病や失明者が減少します。

SECSNピラミッド

Ⅰ.眼科医のフェイコ(超音波白内障手術)研修プログラム

■研修プログラムの工程

1つ目の柱である眼科医のフェイコ研修プログラムは、表に示した5 つの工程で行いました。

眼科医のフェイコ研修プログラム

  1. フェイコ研修センターの開設
  2. フェイコ指導医の養成
  3. 研修機材の作製
  4. 研修カリキュラムの実施
  5. 教育セミナーの開催
■フェイコ研修センター

 フェイコ研修センターは、カトマンズのネパールアイホスピタルとポカラのヒマラヤアイホスピタルの中に開設しました。2 つの病院内に日本から空輸した超音波白内障手術装置と手術顕微鏡やCCD カメラを設置し、そこで、指導医のもとで研修医に臨床手術トレーニングをしてもらいました。

 また、それぞれの病院に日本から空輸した超音波白内障手術装置や手術顕微鏡やCCD カメラを設置したウェットラボルームを作りました。

ネパールアイホスピタル

ネパールアイホスピタル

ヒマラヤアイホスピタル

ヒマラヤアイホスピタル

■フェイコ指導医の養成
 ネパール全土の一般の眼科医にフェイコ手術を指導するのに先立って、4 人のフェイコ手術を指導するためのフェイコ指導医を選抜しました。そして2 ヶ月間の日本滞在中に、串本リハビリテーションセンター、眼科松本クリニック、住友病院、あさぎり病院、井上眼科病院や大阪や東京のアルコン社のウェットラボルームで、最先端のフェイコ手術を教えるための技術を学びました。

Basant Raj Sharma

Basant Raj Sharma
Shree Rana Ambika Shah Eye Hospital

Indra Man Maharjan

Indra Man Maharjan
Himalaya Eye Hospital

Jyoty Baba Shrestha

Jyoty Baba Shrestha
B.P.Koirara Lions Center

Kamal Bahadur Khadka

Kamal Bahadur Khadka
Nepal Eye Hospital

■フェイコ手術研修カリキュラムと日本人講師による教育セミナー

 眼科医へのフェイコ手術研修カリキュラムは、ネパールアイホスピタルとヒマラヤアイホスピタルの2 ヶ所のフェイコ研修センターで、1 回につきそれぞれ2 人研修医をとって年に2回行いました。1回の研修は1ヶ月間で、先に日本で指導技術を学んだフェイコ指導医が指導を行いました。

 また、日本人医師による教育セミナーが、2 つの研修センターで行う研修カリキュラムに合わせて、5 月と12 月の年2 回、1 回2 日間(1 日は講義、1 日はライブ手術)の日程で計5 回行われました。この教育セミナーは、ネパールアイホスピタル、ヒマラヤアイホスピタル、トリプバン大学、テ―チングホスピタル、ティルガンガ病院で開催され、多くの全国の眼科医や研修生がこの講義を受けました。

日本人講師による講義とライブ手術

日本人講師による講義とライブ手術

日本より参加していただいた講師の先生方
氏名/所属
第1回

木内良明/広島大学教授

飽浦淳介/鳥取大学臨床教授

第2回

松島博之/獨協医科大学准教授

飽浦淳介/鳥取大学臨床教授

第3回

永原國宏/聖母眼科院長

内藤毅/徳島大学准教授

第4回

松島博之/獨協医科大学准教授

永田万由美/獨協医科大学医師

第5回 木内良明/広島大学教授

Ⅱ.眼科助手の再教育プログラム

 ネパール全土の眼科助手(OA)の再教育を行うための指導OA を養成するために、12名のOA がインドのアラビント病院やLV Prasad Eye Institute やLAICO、日本のニデックで1ヶ月~ 6ヶ月間の研修を受けました。

 また、屈折矯正、手術室管理、医療機械管理、眼科公衆衛生の4 分野で一般OA に対して指導OA が3 日~ 2 週間の教育カリキュラムを実施しました。 研修コースにはネパール全土の病院から合計82名のOAが参加しました。内訳は屈折矯正コース25名、眼科公衆衛生25名、医療機械管理15名、手術室管理17名です。

眼科助手の医療機械修理研修

Ⅲ.ヘルスポストの医療士のプライマリアイケア教育プログラム

ヘルスポストマップ

 ヘルスポストの医療士へのプライアリアイケア教育プログラムの対象地域は、NNJS 傘下の8 眼科病院が担当する15郡です。この地域に826のヘルスポスト、サブヘルスポストがあり、826名のヘルスポスト医療士がおります。

 まず、15郡のヘルスポスト医療士を教育するための指導眼科助手(OA)を養成するために、12 名のOA がカトマンズのTITI にて2週間の研修を受けました。そして各地域のヘルスポスト、サブヘルスポストの医療士を集めて、NNJS の8 病院にて1 回3 日間の研修カリキュラムが実施されました。

 プライマリアイケアキット(懐中電灯1、蛍光ライトペン1、拡大鏡1、蛍光色素紙100、睫毛鑷子1、抗生物質点眼100、視力表1 が入っている)を1000個作製し、研修コースに参加したヘルスポスト医療士に配布しました。また、ヘルスポストスタッフ用の英語の教科書と女性コミュニティーヘルスボランティア用のネパール語のプライマリアイケア教科書をおのおの1000 冊作り、講義を受けた者に配布しました。

 対象地域の830か所のヘルスポストの内、791か所のヘルスポストから791人のヘルスポスト医療士が研修を受けました。彼らの日常業務のプライマリヘルスケアの中でプライマリアイケアを行い必要な患者は病院に紹介した。結果的に対象地域の病院では外来患者の増加が見られました。

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